雇い止め

》 旧ブログ記事(2010年以前)

なんとなく雇い止めの話が増えているような気がする・・・
有期雇用契約の期間満了で契約終了とする場合、
「有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準」http://www.kana-rou.go.jp/users/kijyun/yukiksnzn.htm というのがありまして、
その基準の中の第2条、
『  第2条(雇止めの予告) 使用者は、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第2項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。』


・・・と、更新を繰り返してたり1年を超えて勤務している労働者に対しては、契約期間満了の30日前までに雇い止めの予告をしなければなりません。
どうもこの30日前の予告というのを、労働基準法第20条に規定されている解雇の予告の30日前というのと混同し、有期雇用契約の期間満了にも関わらず、更新を繰り返してきた人に関しては、30日前に予告をしなかった場合、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければならないと勘違いしている人を多々見かける・・・
雇い止め基準の30日前までの予告違反をした場合、どうなるか?
『 行政官庁は、雇止めに関する基準に定める内容に反して労働契約の締結や雇止めがなされた場合にその是正を求める等、雇い止めに関する基準に関し、有期労働契約を締結する使用者に対し、法第14条第3項に基づき必要な助言及び指導を行うことができるものであること。 』・・・と、なっています。
さて、その法第14条第3項とは?
~労働基準法 第14条 ~
(契約期間等)
第14条 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、5年)を超える期間について締結してはならない。
1.専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
2.満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)
2 厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる。
3 行政官庁は、前項の基準に関し、期間の定めのある労働契約を締結する使用者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。
~引用終わり~
つまり、雇い止め基準違反しているから問題ありますよと、注意されることになるわけですね。
しかし罰則規定はないので、労働基準法第20条(解雇の予告)違反とは違い、刑事罰の責任は生じません。
そして予告義務違反をしたとしても、それでもって契約期間満了での契約終了が無効になるかといえば、そんなことはないと思われます。
はい、ここまでのところ、刑事上と行政上のペナルティについて考察してみました。
では次に、民事上のリスクを考えてみましょう。
有期雇用契約が繰り返され、実態として期間の定めのない雇用のようになっていた場合、雇い止めに関して、解雇とみなす・・・と、解雇権濫用法理が類推適用されることに。
解雇権濫用法理・・・これは民事的なお話になり、監督署では基本的に判断はしないと思います。
例外として、さすがに毎回の有期雇用契約の契約更新手続きがいい加減で、雇用契約書もなく、契約期間があいまいな状態で経営者が有期雇用契約だったと主張するのが苦しいような状況でしたら、監督署でも、これは有期雇用契約だったとは言えないでしょ(汗)・・・ということで、期間の定めのない雇用だったとして解雇の手続きの違法性等を問うことになるかもしれません。
この有期雇用契約が実質的に期間の定めのない契約となっているかについて判断し、解雇であると、原則として監督署が判定することのない根拠については、改正パート労働法の通達の文章が参考になると思います。
リンク先の25ページ目より(勝手にリンク)
http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/koyou/hiseikiroudou/part/news/20071004.html
『 なお、当該労働契約が反復更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められるかについては、最終的には裁判所において判断されるものであることに留意すること 』
社会通念上・・・とは、なんぞや?!誰が判断するねん?!
そんな曖昧な明確な基準がないものに関しては、民事でやってくださいませ。
実は上記通達の存在、ビジネスガイド等でおなじみの、中川先生講師でパート労働法の解説してもらった時に教えてもらいました。
本当は中川先生から紹介いただいた、議会での、
「大体でいいですよ、反復更新何回ぐらい、何年ぐらい働いたら期限の定めのないとなるの?」「いやいやそれは社会通念上・・・」という繰り返しの、大臣と委員のやりとりの議事録のが非常に面白いのですが、ブログ上では割愛します。
(中川先生には通達や労働判例を読む面白さを教えてもらい深謝でございます☆)
いずれ、刑事上、行政上は問題なく雇い止めしたとしても、民事上は実態として期間の定めのない契約だったと判断され、解雇権濫用法理の類推適用により「解雇」とみなされる判決のでている裁判事例が多々あります。
そうなりたくないのであれば、日頃の雇用管理が大事になってきます。
以上、雇い止めの解説でしたが、
当たり前のことですが、労働者は機械じゃありません。心があります。
経営者であれば、クールヘッド&ウォームハートを目指していただきたいです。
(関連日記 http://keiei-roumu.sblo.jp/archives/200709-1.html )
苦しいのはわかりますが、相手に不利益なことを伝えるにあたり、誠意、思いやりを忘れないで欲しいです。

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