性格がなにげに自分、歪んでいるので、よほど定評のあるものなら別であるが、専門書についても、斜めに疑って読むことが多い。
実際、けっこう市販の就業規則に関する書籍など、内容が間違って記載されていたり、「???」と疑問に感じる内容のものがたまにある。
あのビジネスガイドでおなじみのM氏の書籍でさえ、その書籍から引用した規定で作成した育児介護休業規程、○等室で受け付けてくれませんでしたのでね・・・(参考→2008.1.16)
最近、中途半端に労働法と民事の労働問題に詳しくなってきて、抜けのない完璧な就業規則を作成することの難しさを、しみじみと感じてきた。
『民事』の紛争が増えてきたことは、うっかり作成してしまった条文1つを根拠に権利を主張される事態の発生もありうるわけで、就業規則作成者にとってはプレッシャーかもしれん(苦笑)。
基本的な自分の就業規則に対するスタンス、
過去の日記(2008.1.16)のコメントから転記
———(引用)
私の会社さんに対するスタンスは、『財務状況と労務管理は無縁じゃない』ということをベースに、労務管理の提案などをさせていただいています。
会社が倒産したら、従業員の生活もあったものじゃないので、働く人たちのためにも、まずは会社の存続の為の就業規則を考えたいと思っています。
そのため、会社のリスク回避に重点を置き、法定外福利厚生部分については財務状況に余裕のある会社さんであれば、それに見合った提案も考えますが、基本は、法律上、クリアしなければいけない最低限度の提案にさせてもらってます。それを踏まえたうえで、充実させるかは会社さんの裁量なので・・・
———(引用終わり)
就業規則作成において、次の3つの視点で考える。
①〔刑事対策〕法律上、クリアしなければいけない強行法規の最低基準で制度を仮設計。その上で、会社の財務状況を勘案し、経営者の従業員に対する思いなど福利厚生規定等に反映し、必要に応じて余裕のもたせた制度設計に修正していく。
・・・これは、労働基準法など、労働法規を熟知していないと、ギリギリの設計はできません。OKとNGの境界線がわからず、うっかりやりすぎると強行法規を破ることになり、刑事上の問題など発生させるリスクを生じさせます。
お金ないのに無理な設計は会社の首を絞めます。しかし、お金なくても最低限、守らなければならない基準があります。
損得、金銭、からみます。
法定以上の休暇数や割増、雇用継続制度で再雇用制度でなく定年延長を選択など、よく考えないで設計してしまうと、後から「しまった・・・」と、泣きをみるかもしれません。
財布と相談して☆
②〔民事対策〕就業規則も民事的な「労働契約」として労使双方を拘束してしまうことを認識し、紛争回避および実際に紛争になったときのためのリスク軽減対策の規定を入れる。
・・・これは、実際に裁判になったような労働問題を分析し、万が一裁判になった場合も想定した考え方などを取り入れた規定をトラブルの予防、回避のために定めていきます。
近年、情報が入手しやすくなった等の背景により、とても民事の労働紛争が増加しています。いままで以上に、企業としては対策の必要性が増しております。
③〔組織の仕組みづくり・モチベーションUP対策〕社員の採用ルールなど、会社の運営上必要な業務手順を入れたり、会社の目指すべき企業風土構築のため経営理念などを入れる。
債権債務のリスクや、民事上の紛争リスクも低いジャンルかと思われますが、せっかく就業規則を作成するなら、ついでに活用しましょう。
まずは①と②がしっかりしていることが前提です。法律的知識に自信がないなら、余計なことを書くと、余計な紛争を誘発します。
③で独自性を出すのはよいのですが、契約文書(就業規則)に余計なことを書いて紛争の元にしないようにだけはお願いします。
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世の中の就業規則の書籍の中には、タイトルに、
「会社がトクする!・・・」
と、書いていながら、会社が損する就業規則の規定を堂々と紹介しているのもある(汗)
(私のほうが無知で、認識違いをしているのかもしれんが)
ふぅ・・・・
一例でいうと、法定休日の話。
労基法上、原則、1週間に1日の休日を与えなければならない。これを法定休日という。
この会社がトクをするという就業規則では、参考例として「毎週1回の法定休日を毎週日曜日と指定し・・・」と記載し、法定休日をしっかり指定しておこう!・・・とコメントしておる(汗)
・・・・・・・・。
私は法定休日は、特定したほうが望ましいことにはなっているけど、しっかり指定しないほうが会社はトクだと思うよ。
(本日のブログ、労働者側の人が見たら、気分を害するかもしれませんが、ごめんなさい)
休日の考え方ですが、
休日は、毎週少なくとも1回与えなければならない(法第35条1項)の、「毎週」という場合の、週の始まりと終わりについては、法律上定めは特にないんですね。
なので、就業規則などで「月曜日から次の日曜日まで」と定めた場合、その定めによることができる。
もし就業規則などで定めなかった場合は、「日曜日から土曜日まで」の暦週が1週間であると解されています。
で、週休2日制の会社さんも多いわけですが・・・
例えば、日曜日から始まる暦週を1週間として、日・土を休日とする完全週休2日制の会社があったとする。
この場合、毎週日曜日を法定休日と指定し規定するのではなく、
「日曜日及び土曜日の両方出勤した場合は、日曜日について25%の割増賃金、土曜日については35%の割増賃金を支払う。日曜日又は土曜日のどちらか一方に出勤した場合は、その日について25%の割増賃金を支払う」という旨を就業規則に規定することも可能ですよ?
(なぜ日曜でなく土曜が35%割増なのか等、解説の詳細は省略。参考文献:労働時間実務辞典 発行所/株式会社 労務行政 厚生労働省労働基準局賃金時間課監修)
果たして、どっちがトクでしょね?
監督署等で無料配布しているモデル就業規則をそのまま使うのは大変危険ですし、市販の就業規則の書籍も信用ならん・・・
自力で自社で就業規則を作成するなら、少なくても著者の違う就業規則の書籍を3冊ぐらいは買い込み、規定を見比べながら作成することが望ましいかと思います。
けっこう書籍によって、一長一短がある。
就業規則は面白いですねぇ・・・
あれこれ考えるのが楽しいです(笑)
なんとなく自分のブログの中でも、ネタにする回数が多いように思います。
しかしながら、理想への探求は、まだまだ続きそうです。
コメント
ごぶさたです。shojiです。
ブログいつもさらっと読んでますよ。
最近岩手までは仕事で行っています・・・。
書籍の間違いや見解の違いなど拾い上げたらキリがないのですが、すごいありますね。
うちは法定休日は定めないのが、基本かな。育児の件も実は奥が深いんですよね。
いずれにしても楽しそうに仕事できているようで、よかったです。これからもお互い頑張りましょう。
企業が継続して存続するという前提にたつと、
就業規則は大切ですね。
経営者の事業存続というテーマに、「従業員」様は欠かせません。
トラブルが起こる前に手立てを打つ、リスク管理を社労士の先生に助言してもらえると、経営者、管理職の方の考え方が少しでも変わりそうな、企業がこちらにも多いように思います。
モチベーションを高めるための方法を求める企業って増えてきてると思うんですけどね。
iwave shojiさんへ
お久しぶりです!いつもブログ、好き勝手書いているので読んでいただき照れますが嬉しいです♪♪♪
私もshoji先生と峰岸先生のブログはさりげなく いつも読んでおります☆
岩手までですか!秋田まであと少しの距離ですね。
益々のご活躍、お祈りしております★
書籍の間違いは、法律に詳しくない人は鵜呑みにしてしまうでしょうから困りますよね・・・
社労士であっても、おかしいことに気付けるためには、日々勉強が必要ですね(苦笑)
ちなみにご存知かもしれませんが、土曜が35%割り増しになるのは、
①日曜日に出勤させただけでは法35条違反は問えない、②日曜に既に休日出勤させていれば事業主としては土曜日に労働させれば法定休日が確保されなくなるのはわかっているのに土曜日に労働させることになる、よって当該暦週において後に位置する土曜日が法定休日になると解さるとのこと。
法定休日に関する知識なかったとしても、法定休日を特定していなければ、違反が発生し監督署から指導があったとしても法の最低基準の履行を求められるにとどまることも多いと思うので、下手に書くより法律上要求されていないことまでは明記しないほうが無難なこともありますよね・・・
育児の規程も、作成の際には頭をひねりました(笑)
税理士しげさんへ
「顧客こそ主人であって、企業員はこの顧客に奉仕するものである。なぜならば、企業員の生活費は、顧客から与えられるものだからである・・・」
「藩のトップである藩主は、社員並びにお得意さんの意志によって動く存在であり、その意志を無視しては存立し得ない・・・」
<経営改革の祖 上杉鷹山の研究 危機を乗り切るリーダーの条件 著・童門 冬二 より>
上杉鷹山、面白いよー。
社員を活かすという点も含め総合的に参考なるので、おすすめだよー。
古本屋とかで機会があったら探して読んでみて♪
こんばんは。ご無沙汰しております。
週の起算日を土曜日と規定しておく手もありますね。
何にも書いておかないと当然暦日で日曜日起算になりますが、規定上、土曜日起算にしておく。
土曜日出勤で水曜振り替えだと、同一週なので割増賃金の問題が発生しないと言う訳です。
運用をにらんでどう規定を変えるかですかね。
ミネちゃんさんへ
ご無沙汰しております。でもいつもブログはこっそり読んでいますので、ご無沙汰じゃないような感覚です。ご自宅の窓から見える景色、素敵ですね☆
峰岸先生は私の師匠ですからね。ブログチェックはかかせませんよ。うふふふふ(笑)
(そのわりに弟子らしいことはなにもしてないし、いつも音信不通ですが(汗))
土曜日を起算日に・・・なるほど、そのような定めもアリですね。
法定休日は4週間を通じ4日以上の休日(労基法第35条第2項)という変形休日制をとるのも可で、この変形休日制についても就業規則などに定めることまでは要求されてないけど、就業規則その他これに準ずるもので、4週4日の休日の起算日を明確にすることが必要(労基法施行規則第12条の2第2項)というのもあるので、毎週1日もしくは4週4日のどちらにするにしても「起算日」は、ちょっと頭をひねって、どうするのが会社さんにとってベストなのか考えてしまうところですね。
運用まで考えると、社労士試験には出ないような細かいところまで熟知した知識や応用力が要求されますね。
法定休日1つをとっても奥が深い(笑)