整理解雇(※補足しタイトル変えました)

》 旧ブログ記事(2010年以前)

「罪刑法定主義」が刑法の基本原則。
日本も憲法第31条によって、何人も、法律の定める手続きによらなければ刑罰を科されないことが定められておる。
法律なければ犯罪なし、法律なければ刑罰なし・・・っていうことで、あらかじめ法律で成文化されていなければ、その行為を犯罪として罰してはならないことになっている。


労働基準法や労働契約法など、いろいろな条文が定められているけど、その条文に違反したとして、どうなるかは、罰則規定の有無などにより民事または刑事責任も生じるかなど判断していくことになると思われる。
実務家としては、行政指導などを受けたときには、それに応じなかった場合に、ペナルティや罰則があるのかどうかを冷静に判断し、不利益にならないよう対応を考える必要があると思われる。
たまに企業の担当者の無知をいいことに、任意でよいはずの部分まで、あたかも強制力があるがごとく改善要求し、会社担当者を苦しめてるのを見かけますのでね・・・
決してズルしたいとかじゃなく、やることはやった上で、納得できないことには反論できるように、実務担当者も勉強は必要ですね。
民事の問題となると行政も注意(指導)はするかもしれないけど、強制力はなく、最終的には裁判とかそういう話に。
監督署でも、例えば解雇の場合、解雇の手続きについては違法性を問うことになるけど(第20条違反等)、解雇の理由については民事になるので是非の判断はできない。有期雇用の雇い止めの是非についても、民事になり判断できない。
一応、労働局でも「あっせん」制度など、民事を扱う制度はあるが、民事のことなので労働局は中立的な第三者として示談交渉する場を提供するにとどまり、裁判所の判決のように、強制力をもった解決の命令を出すことはできない。
労働問題が生じたときは、刑事罰や行政罰の問題も含むか、民事のみかの境界線の判断というの、けっこう重要になってきます。
このところ、ニュースでも世間話でも、いたるところで雇用調整の話が多々でます。
整理解雇や雇い止めの話題も多いですね・・・
あまり気が進まないテーマではありますが、本日は少し、整理解雇の話を書きたいと思います。
(本日の内容は、労働者側の人が読んだら気を悪くするかも・・・)
整理解雇のための4つの要件というのは、監督署でもらえるパンフレット等にも紹介されているし、実務担当者であれば知っている人も多いと思います。
知らない人のためにも念のために書くと、人員整理による解雇が正当と認められるには、下記の4つの要件が考慮されると説明されているのが多いです。
①人員整理をする経営上の必要があること
②整理解雇を回避する手段を尽くす等、使用者が解雇回避の努力を尽くしていること
③解雇手続きに相当性、合理性があること
④解雇者の選定が適正であること
裁判になった場合を想定して考えた場合、解雇に正当性あるか等といったことは、個々の事案ごとに総合的に判断されることになるし、同じような事案でも異なる判決になることも多々ある。
しかしながら、過去の裁判例というのは、労働問題の解決を考えたときには貴重な参考情報になる。
上記の4要件というのは、過去の労働裁判の判決内容から定着した考え方である。
実務上は、裁判になった場合も想定して慎重にコトを考えるのであれば、更にその4要素について、細かく内容を考察していく必要がある。
例えば、整理対象者の人選の合理性。
非正規従業員の解雇問題とか、世間をにぎわせましたが、残念なことに正社員よりは、まずは非正規から切るというのは、過去の裁判の判決内容の趣旨に沿っている・・・
日本では、終身雇用の慣行の下において、定年までの雇用を前提とする「正社員」と、そういった長期の雇用保障のないパート、アルバイト等といった臨時的な社員制度がある。
裁判の判決の考え方では、臨時労働者の立場は、「景気の変動による需要にあわせて雇用量の調整をはかるために雇用されたものであって・・・(S49.7.22 東芝柳町工場事件)」「一定の限度までは雇用量を恒常化することができても、景気変動の波が安定していない経済界においてそれに備え雇用量を調整することは企業の採算上やむを得ないことであり、そのために設けられた臨時従業員制度の存在理由なしとするを得ない・・・(S43.3.1 八欧電気事件)」・・・などなど、とても不安定な身分を肯定している内容が多々ある。
そのような背景もあり、たとえ期間の定めのある雇用契約を更新していて期間の定めのないような契約に実質的になりつつあったとしても、その雇用契約の本質的な考え方からすれば、雇用量の弾力的調整要員である非正規従業員が、まずは先に切られてしまう立場にある。順番を逆にするのは原則として許されない。
・・・その他、人員整理のための解雇が正当とされるためには、解雇回避のための努力を尽くすことが必要であり、希望退職の募集や退職勧奨なども、その要件の1つであったり、細かいポイントがあるのですが、ブログ上では、このへんにしておきます。
ほんま、裁判の判決事例の流れからしても、やむを得ず解雇するにも、まずはできる限り解雇にするのではなく必要に応じて退職条件を示したりして説明と説得を尽くし希望退職や勧奨退職になるよう、努力してください・・・
使用者は信義則上、労働者と協議をすることが大事であり、人員整理の必要性の説明もなく、解雇回避努力することもなく、いきなり解雇と告げるのでは、裁判されたら負ける可能性が高まります。
整理解雇の裁判の判決事例、多数ありますが、S62.5.6住友重機愛媛製造所事件など、参考になるポイントが多々含まれているように思います。
(勝手にリンク)
http://www.zenkiren.com/jinji/hannrei/shoshi/03050.html
あまり解雇のノウハウみたいなテーマは、不特定多数の、いろんな立場の人が見ているブログ上では書きたくない気持ちがありました。しかし、経営者側の誠意ある対応により民事的な紛争が大きくなる前に防げたなら、結局は使用者にとっても労働者にとっても望ましいことだと思ったので、少しですが、書かせていただきました・・・
さて、寝ます。
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<補足>
あさひ保育園事件
整理解雇の対象とされた保育園の保母が、右整理解雇は希望退職者を募る等十分な手続を経ずになされ信義則に反し無効である等として雇用関係の存在確認等求めた事例。(上告棄却、労働者勝訴)
引用元: http://www.zenkiren.com/jinji/hannrei/shoshi/00646.html
上記事件のような解雇、よくありがちのように思う・・・(汗)
(リンク先を見てくださいね)
いまは便利な世の中でして、全部ではないですが、労働判例をネット上で探すことができます。
(おすすめサイトを勝手にリンク)
http://www.ne.jp/asahi/morioka/masato/roudou.htm
http://www.ne.jp/asahi/morioka/masato/jihou998.htm

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