経営理念の話

》 旧ブログ記事(2010年以前)

中村天風が修行中に師から次のような質問を受けた。
「お前は、何をしに生まれてきたのか?」
それに対して天風は考え続けた結果、宇宙の正しい姿である「進化・向上」に順応すべく生まれたとの結論に至る。
宇宙は、いま現在も、拡大・成長を続けている。
つまり、大宇宙そのものは、進化・向上・成長していくのが自然の姿なのだそうだ。
それゆえ、その一員である人間も、やはり進化、向上すべく生まれてきたのだそうな。他者に貢献していく生き方も、進化であり向上と言える。
<参考・引用文献:中村天風に学ぶ/著・松本幸夫 総合法令>


調和ということは、厳粛なる宇宙本来の面目であり、かつまた人生の実相であると同時に、生きとし生ける生物の生命の本来の姿なのである。言い換えると、調和ということは、万物存在の絶対に侵すべからる尊厳なる自然性なのである・・・(中略)・・・であれば、政治であれ、事業であれ、さらには人事世事一切合財、調和がすべての完成へ重要な役割を果たすので、どんな思想でも主義でも、また計画でも設計でも、調和を無視した考慮では、とうていその完成は現実化されないのが当然なのである。
<引用文献:ほんとうの心の力/著・中村天風>
中村天風さんのいう「真」・「善」・「美」、非常に深いなぁ~と思う。
(参考 http://keiei-roumu.sblo.jp/article/30247488.html#more )
よく「経営理念」が大事とか聞きますよね。
確かに文字にして明文化した「言葉の力」の大きさを考えると、経営理念を明確にする効果は理解できる。
しかしながら、哲学的に「経営理念」を説明できる人がどのぐらいいるのだろう。
なんか世の中のハヤリ、コンサルタントに踊らされてスローガンつくりました・・・って人もいたりして。
まぁ、結果的に言葉のエネルギーの恩恵こうむれて経営にプラスになるのであれば、結果オーライでよいのかもしれない。
しかしながら、どうも自分はすっきり自力で、腹からわかった・・・とならないと気がすまないところがあり。
経営理念は、どんな内容でもよいのか?
例えば、経営理念を「世界征服」とか「お金を儲けて自分だけ金持ちになる」とかにしてもよいのか?
ずっと、それに対する答えを考えていました。
あまりよくないことはわかるけど、すっきり説明できる答えが見つからない。
それが中村天風さんのいう、「真」・「善」・「美」の話で、すっかり解決した。
宇宙がどうだのとか言い出すと、うさんくさいとか怪しむ人もいるかもしれないけど(笑)、私が思う大物人物は宇宙的スケールで物事、精神世界を考えている人が多いのですよね。
それに影響されてか、その前からか、私も宇宙的スケールで考えるのが好きなのですが(笑)、宇宙の真理は「真善美」という天風さんの話に納得した。
それ故に経営理念も「真善美」から外れた理念はよろしくない。「真善美」を無視して押し通したとして、いずれ歪が生じることになり、仮に物質的成功を収めたとしても、幸せな成功者にはなれないでしょう。
それぞれのおかれた立場から、進化・向上のため、ひとかどの存在になるべく、何をもって宇宙万物運行の原則に貢献するか宣言をする。石ころでも磨かないよりかは、磨いたほうが光るもの、そんなところに人生の味わいがある。
それを経営理念といえば経営理念となるのじゃないでしょうかね。
道に則れば人間無限の可能性・・・
『宇宙の本体は、絶えざる創造変化活動であり、進行である。その宇宙生命より人間が得たるものを「徳」という・・・(中略)・・・しかもその本質は「常に自己を新しくする」ことである。宇宙万物運行の原則であり、したがって人間世界を律する大原則である。人間はこの「道徳」の因果関係を探求し、その本質に則ることによって自己の徳(能力)を無限に発揮することができるのである・・・』
<引用文献:人物を創る/著・安岡正篤>
表現こそ違えど、天風さんと安岡さんの思想、書籍からは東洋哲学をベースに通じるものを感じる。
余談であるが、なかなか人間学というのは面白い。
理想主義の道徳家の心。兵は詭道なり、現実主義の兵家の思想・・・・
悪党も仁義なければ大悪党になれません。
厳しい現実でも志だけは気高くもっていたいところですが、生きていくためには・・・という選択を迫られる場合もあると思う。
お釈迦様の伝記を調べてみると、釈迦の故郷、カビラ城と釈迦の一族は滅亡しているのだそうです。彼らは切々として釈迦の救いを求めたものの、釈迦はついにそれに応じず。因果応報として諦めきっていたそうな。釈迦の理想はそうゆう一時の興亡を超えていたけれど、されど釈迦も人間ゆえ、この一族の悲運に際しては、非常に煩悶されたことが十分知られている・・・・と、理想主義者がずいぶん倒されてきた事例として安岡さんの書籍に書かれています。
<参考文献:運命を創る/著・安岡正篤>

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